2012年11月25日

秋の夜長にショートショート。<タイバニ>

長いこと……ほんっっっっっっっとうに長いこと、小ネタすら発表せずにスミマセン。
今月は、遙の、風早のお誕生日とか、夏目の、名取さんの誕生日とか、全部すっとばしてしまいました…。
が、来月の大地と忍人さんの誕生日に向けて、そろそろリハビリしなければ…。クリスマスネタも書けたら書きたいよ…。
というわけで、リハビリに、「秋の夜長」がテーマの小ネタを連作したいと思います…。
…思ってるだけで、今のところ二つしかネタが思いついてないので、連作になるかどうか謎ですが。
しかも、秋の夜長って、もうすぐ冬だよ!みたいなw
遅いよネタ出しが!w
という感じですが。
よろしければ、おつきあいください。

まずは、タイバニ、空虎空から、どうぞです。



秋の夜は、長い。


早寝早起きのキースがベッドに入る頃、宵っ張りの同居人はまだ自室に戻らずリビングでごそごそしているのが常だ。
「すまない、先に休むよ」
キースがかけた声に、
「おう」
と、生返事が返るのがお約束のようになっている。
少し顔をしかめて、早く寝るんだよ、と、小言じみたことを口にしながら部屋に引き取る。…だが実を言えば、キースは一日で一番、この時間が好きだ。
「…」
布団の中で耳をすます。虎徹の立てる生活音がひそやかに聞こえてくる。
カランカラン、と、氷がグラスにこぼれる音(…またショーチューでナイトキャップ?…ほどほどにね。)。
ずずっ、と、鼻をすする音(…寒いのかい?まさか風邪でもひいたんじゃないだろうね。暖房をもっと強くして、ガウンも着て、…暖かくしなくちゃ)。
キースに遠慮しているのだろう。ごほ、と音を押さえたしわぶき、布張りのソファに沈み込む音、モバイルを操作しているらしい、かすかな電子音、小さなため息、静かな苦笑、ことん、とテーブルにグラスを置く音。
さわさわ、さわさわと聞こえてくるそれらの音は決して耳障りではなく、いや、耳障りどころかむしろ、ひどく愛おしく。
音にひたすら耳をすましているうちに、一日の疲れが綿のようにキースにふわりと覆いかぶさってくる。まるで幸せという名の布団にくるまれるように、キースはぬくぬくと眠りにつくのだ。
暖炉の炎にあぶられてとろとろにとろけるマシュマロのような、何ともいえない甘くやわらかなこの時間が、キースはたまらなく好きだ。


リビングで、虎徹がふと顔を上げた。
たった今まで、横になってはいるもののまだ寝てはいないキースの、意識というか気配のようなものを感じていたのだが、それがふと途切れたのだ。
打ちかけのメールを置いて、そっと耳をすます。
……かすか、……ほんのかすかだけれど、聞こえてくる息づかいは、彼がしっかりと眠りについたことを示している。
きっちりと規則正しく、慎ましやかなその呼吸は、いかにも彼らしい。…生真面目で、暖かな音だ。
「……」
虎徹は、キースの寝息が好きだった。
海ではなく、静かな湖面にたつ小波のような、湖畔の木々の葉擦れのような、穏やかなその音。聞くだけで、虎徹の中の何かが凪いでいく。
…と同時に、その息づかいは、何ともいえない愛おしさをも虎徹の中にふつふつと呼び起こす。
……愛おしい。…いとおしい。…たまらない。
どんなに寒い夜でも、この息づかいを聞くだけで、じわりと心は暖まった。
「……」
虎徹は時計を見上げた。秋の夜は長い。まだ時計は日付を変えたばかりだ。
…彼は微笑みながら、酒の入ったグラスにそっと唇を寄せた。

…この愛おしい寝息をつまみに、もう少し、秋の夜長を楽しむとしよう。

posted by 麻井由紀 at 03:18| Comment(0) | TrackBack(0) | T&B | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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