2012年09月14日

帰ってきたお題った・38<タイバニ>

あさいさんは、「夕方のベランダ」で登場人物が「さびしがる」、「林檎」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai http://shindanmaker.com/28927

キースさん一人語り。超短いです。過去捏造。


夕暮れのベランダで、キースはぼんやりと街を眺めていた。
高層階から見下ろす街は、模型のようだ。
街のぐるりを取り巻くように走るモノレール、シュテルンビルトという終着点に向かって北や西から走ってくる列車。
「……」
…あの日キースも、北からシュテルンビルトに向かう列車に乗っていた。着替えくらいしか入っていない小さなサックと、小さく青いリンゴを持って。
道中少しずつかじっていた青いリンゴの味を、キースは今も忘れない。シュテルンビルトで手に入る、赤くて甘くて汁気の多いリンゴとは全く違う、ぼそぼそとして固くてすっぱいリンゴだった。
二度と帰ることはないだろう故郷を思って切なくなったり寂しがったりすることはついぞないキースだが、あのリンゴの味だけは時折無性に懐かしくなる。
キースの故郷ではごく当たり前にあちこちで見かけたあの青く固いリンゴは、シュテルンビルトでは何故か、どんなに探しても見当たらない。だから余計に郷愁を誘うのだろう。
ベランダの手すりにもたれて、キースは手にした赤い大きなリンゴをシャツで少しこすり、そのままかぶりついた。
甘く華やかな香気にがっかりしている自分を、ほんの少し嗤いながら。
posted by 麻井由紀 at 03:07| Comment(0) | TrackBack(0) | お題ったー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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