今回、ちょっと変則的です。
百万人の金色のコルダ。携帯ゲームの例のアレ、に出てくる不動葉介さんと王崎先輩の話。
ちょっと最近、脳みそが葉王で(リバでも可)盛り上がっていまして。
無印には(特に無印でBLは)書かない予定だったのですが、モバコルは無印じゃない、ということで(えー)ちょっと書いてみました…。
といってもまだあんまりBLっぽくない…。誰とは言わない、王崎先輩のせい…。無自覚ファータめ…。
あさいさんは、「早朝の床の上」で登場人物が「見上げる」、「林檎」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai http://shindanmaker.com/28927
よろしければ、どうぞです。
「あいた…」
がくりとたれた頭が壁にぶつかって、王崎ははっと目を開けた。
「…ああ…またやっちゃった」
床の上に座り込んで譜読みをしたまま眠ってしまったのだ。いけないとは思うのだが、熱中してしまうとついつい時間を忘れる。
のろのろと起き上がり、カーテンを開けると、空はもう既に白々と明け始めていた。窓を少し開けると、早朝の冷涼な風が部屋の中の淀んだ空気をさっと払う。ぼんやり見上げる窓の向こうに枝が黒い影を描く。…リンゴの木だ。
「……」
王崎はふと、以前この部屋に遊びに来た葉介の言葉を思い出した。
「珍しいね。このあたりではあまりりんごの木は植えないのに」
窓の外の枝を見て葉介は不思議そうにつぶやいた。
「確かに、…気候が合わないんだろうね。小さな実は生るんだけど、あまり大きくならないし赤くなる前に落ちてしまうものも多いんだ」
何気なく王崎が答えると、
「…象徴的だね」
葉介は笑った。…どこか昏い笑みだった。
「君の果実を得られる人間は、誰もいないわけだ」
「……?不動…?」
葉介の言葉の意味がわからなくて王崎が首をかしげると、
「何でもないよ」
静かに葉介はつぶやいた。
「何でもない。…気にしないで」
そのあと葉介がちがう話題を持ち出したのでその話はそこで立ち消えになってしまい、王崎自身、そんな会話をかわしたことさえ今の今まで忘れていたのだが、何故だろうか、今になって、過去の言葉が王崎の心にこびりついて、離れない。
「誰も手に入れられない、果実」
口に出すと、脳裏に、あの日の葉介の昏い笑みがちらりと浮かんで、消えた。