2012年02月22日

猫の日

猫の日記念でお友達に犬大地と猫蓬生を書いてもらいました!!
かわいくてうれしくて、せっかく今日は猫の日なんだし、自分も何か…というわけで書いたのがこれです。大土です!

なぜだか今日は猛烈眠くて、校正の能力が発揮できません…。でもどうしても猫の日が終わってしまう前に更新したいので、とりあえずブログで流します。後日サイトに載せる前に校正やりなおしますね…。

では、もしよろしかったら続きへどうぞ!



「今度病院を変わることになって引っ越すんだけど、新しい家では猫を飼おうかと思うんだよね」
久しぶりに神戸に来た大地がそんなことを言うので、蓬生はコーヒーのカップに口をつける直前でふと手を止め、眉を上げた。
「珍しこと言うやん」
「珍しいかい?」
大地は怪訝そうな蓬生に穏やかに笑いかけて、自分のカップに口をつける。
「君は犬派やと思てたわ」
「今まで飼う機会がなかっただけで、猫も好きだよ。…引っ越す予定のマンションが少し広いんだ。何もなくてがらんとしているせいかな、ずいぶん寂しく思えてね。確認したらペット可だそうだし、飼うのもいいかなって」
「……へえ」
大地が熱を入れて話せば話すほど、蓬生はつまらなくなってきた。
久しぶりに会ったというのにいきなり猫の話だ。しかもまだ飼ってもいない猫。病院を変わって引っ越しもするというのにどこに引っ越すのかすらまだ口にしない。
いらつく自分の気持ちが自分で腹立たしい。大地に心揺らされる、ということが我慢ならない。
拗ねているであろう表情を見られないように、蓬生はコーヒーカップで口元を隠し、ぼそりと言った。
「ほな、早いとこペットショップに行って、かわいらしい仔猫ちゃん探しといで」
ところが、大地から返ってきたのは不思議な返答だった。
「…いや、仔猫でなくていいんだ。大人の猫がいい。…相棒になってくれるような」
「……?」
訝しむ気持ちが、一瞬で蓬生の苛立ちを消した。
「…て、言うたかて、…ペットショップには仔猫しかおらへんで」
「だろうね」
大地はあっさりと言って肩をすくめた。
「だからペットショップには行かないよ。俺の好みは大人で、毛足の長い和猫だから」
「……毛足が長くて、…和猫?」
一般的に言って、長毛なのはペルシャに代表されるような洋猫だ。和猫はほとんどが短毛種で、雑種でもない限りあまり毛が長いとは言えない。
「…また、ようわからん条件つけとんやなあ、君は」
「はは。…しょうがないさ、好みの問題だ。……あとは、やっぱり音楽が好きだといいな。それから、時々は俺に優しくしてくれるとうれしい。いつもじゃなくていいから」
ふと大地は言葉を切った。そして、やわらかく、…けれどどこか喉に絡まるような声でまた口を開く。
「…そんな猫に、心当たりはないかい?……蓬生」

−…!

ふっ、と、…心に一条の光が差した。
光に導かれるように、蓬生が顔を上げてまっすぐに大地を見ると、大地はすがるような請うような眼差しを蓬生に投げかけていた。その眼差しに、ほだされそうになって、蓬生は思わずうつむいた。
「……心当たり、ないこともないけど、俺は、神戸で暮らしとう猫しかしらん。…横浜には連れて帰れんで」
ちくりと胸が痛かったが、事実だ。蓬生は生活も仕事も神戸中心だ。目の前の男を愛おしく思ってもそれだけは譲れなかった。…だが。
「問題はそれだけ?じゃあ、暮らす場所が神戸なら、俺と暮らしてくれるかい?」
うつむいたままの蓬生に、大地の静かな声が降った。
「……神戸?」
「そう。…まあ、病院のローテーションの都合もあるから、いつまでここにいられるかは正確にはわからないんだけどね。…少なくとも、三年はここだ。…その三年の間だけでいい。…一緒に暮らしてくれないか」
蓬生は大地の言葉に一瞬呆気にとられ、…ついで、思わずくすりと笑ってしまった。
「…え」
蓬生の苦笑が何を意味するかわからず、強張った大地の表情の鼻先に指を突きつける。
「君が探してるんは、猫やろ?」
「……っ」
息を飲んで、それから大地は我に返り夢から覚めた顔になった。瞳からも熱が消えていく。痛みをこらえる暗さで瞳から光が消えようとする刹那、蓬生はゆるりもう一度唇を開いた。
「……しゃあないから、一匹紹介したるわ。……毛足が長い和猫で、音楽が好きで、神戸におって、…君にちっとも優しない猫。……それでいいなら」
もう一度大地は息を飲んだ。それからゆっくり、息と一緒に吐き出すような声で一言だけ、
「…いいよ」
つぶやいた。
大地の瞳と蓬生の瞳が合う。…そして、どちらからともなく苦い笑みを含んで伏せた。
「…榊くんは阿呆やなあ。…もっと可愛らしい仔猫ちゃん飼うたらええのに」
「俺がほしい相棒はたった一人だ。他を探すくらいならなくていい」
「……。……ほんま、阿呆」
出よか、とつぶやいて、蓬生は立ち上がった。レシートをつかもうとした手がぶつかり、指と指が触れあう。
…大地の指は驚くほど熱かった。よほど緊張していたのだろう。…その熱さがじわりと、蓬生の胸の奥に暖かな火を灯した。

posted by 麻井由紀 at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | コルダ小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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