2011年07月14日

ブログイベントリクエスト小説その6「蜩の鳴く夜に」

沙霧様のリクエストです。

葦原家 「葦原家の夏休み」

葦原一家ー!うちのサイト一番の勝手設定(…いや他にもいろいろ捏造はしてますが)葦原一家をよもやリクエストいただけるとは!ありがとうございます!
…力入りすぎて、…なんか、別物になった気が(え)。
でも本当に楽しく書かせていただきました、リクエストありがとうございます!

花火大会の話は、昔友達が遭遇した実話です…。電車の窓がまだ開いた古き良き時代のお話…。

いつもお忙しい中、かまってくださってありがとうございます!また遊んでやってくださいませ!


食卓の隅にさりげなく忍人が置いていった物を見て、千尋が声を上げた。
「線香花火?これどうしたの?」
忍人は振り返り、首をすくめる。
「夕方、蚊取り線香を買いに行ったらもらった」
「蚊取り線香買ったら線香花火?」
那岐がくすくす笑う。
「ちがう。千円以上買ったら線香花火一束」
忍人が真顔で訂正した。その真顔が可笑しいと、また那岐が笑う。
「せっかくだから、夕飯の後にでもやってみようか」
おかずを盛りつけ終え、デザートの西瓜を切り分けながら風早が提案した。
「やるやる、線香花火大好き!」
手を叩いて喜んだ千尋は、あー、でも、と言葉を添えた。
「線香花火も楽しいけど、大きい花火も見に行きたいなあ」
「そうだなあ、せっかくの夏休みだし、…山一つ向こうに大きな花火大会をやる街があるけど、行ってみようか?」
「本気?」
「本気か風早」
風早の言葉に、珍しく那岐と忍人が揃って顔をしかめた。
「…?那岐は何となくわかるけど、どうしてお兄ちゃんまで」
「風早が言っているのがもし俺が思うのと同じ花火大会なら、毎年電車がすごいことになると聞いている。…前に羽田が」
と、高校以来の親友の名を出して、
「彼女と一緒に見に行ったんだが、ぎゅうぎゅうの上にまだぎゅうぎゅうと押し込まれて、もうこれ以上は無理だと思ったところへ、あんまり人が詰まったからだろうな、息苦しくて窓を開けた人がいたんだそうだ。…そうしたら、その窓から人が飛び込んできて」
ひえー、と、今度は那岐と千尋が声を揃えた。
「間の悪いことに、飛び込んだ下に子供がいて、大変なことになったらしい。幸い、こぶを作ったくらいで大けがにはならなかったようだが」
「でもあぶなーい」
千尋が眉をひそめて、いやいやをするように首を横に振った。
「窓から入った奴が、こんな時間に子供連れで来ている方が悪いと文句を言ったとかで、羽田がものすごく怒っていた」
「…そりゃそうだよね」
「どう考えたって、窓からダイブする方が非常識じゃん」
と、二人が納得したところで、忍人が結論を言った。
「そういうわけだから、そんな場所に千尋を連れて行くのは賛成しかねる」
「あ、話が元に戻った」
「さすがお兄ちゃん」
「合いの手ばっかり入れてないで、二人とも」
風早が苦笑した。
「でも、じゃあ、そうだね、…実際の大会に行くのはやめておくことにして、見えるあたりまで行ってみようか。ここからじゃ、山に阻まれて見えないから」
「あ、それいい」
千尋がまた手を打つ。
「忍人どう思う?」
「問題ないだろう」
「やったー!お許しが出たー!」
喜びの声が上がったところで
「僕行かないよ」
さらりと那岐が言った。
「……ここへきて、それを言わないでくれよ、那岐」
「だってめんどくさいし」
言ったとたん、千尋がまっすぐ那岐に向き直った。その目をじっとのぞき込む。両手は組まれている。
「ちょ、…千尋、そんな目で見ても駄目だから!」
「那岐も一緒がいいー」
風早と忍人はそっと顔を見合わせた。
「……おねだりモードだね」
「そうだな」
「一緒じゃなきゃつまんないー、やだー」
那岐が真っ赤になった。
「なんだよ、高校生だろ!?何そのセリフ!」
「おねだりされてるんだよ、那岐」
「……」
「一緒にいこ、ね?」
風早に言わでもの解説をされ、忍人に無言で見つめられ、千尋にだめ押しされて、とうとう那岐は叫んだ。
「……!あーもう!わかったよ!行けばいいんだろ、行けば!!」
「やったー!!」
両手を挙げて喜ぶ千尋と那岐を見比べて、忍人はくすくす笑っていたが、ふと、耳をすませるそぶりを見せた。
「忍人?」
「いや、ヒグラシが。……もう日も落ちたのに」
風早は優しい顔で目を細めた。
「きっと友達を呼んでるんだよ。…夏の夜は楽しい声がたくさん聞こえてくるから、人恋しくなるんだろう。一緒にいれば淋しくない。……たとえば、僕らみたいにね」
posted by 麻井由紀 at 23:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログイベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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