2011年07月11日

ブログイベントリクエスト小説その3「この思いに付ける名を」

三番目にリクエストいただいたナデガタ様からのお題です。

東金×土岐で お題は 「親友じゃない」もしくは「思春期」で


……も、も、ものすごく、いただいたテーマまんまのものになってしまって、むしろ自分のひねる能力に疑問を持つというか、なんというか……。

こ、こんなんでよろしかったでしょうか。そして千秋はどんなもんでしょうか。(蓬生はいいのか)
リクエストありがとうございました、ナデガタ様!
またかまってやってくださいませ!




人は得てして、互いの関係に名前をつけて安心するものだ。曰く、夫婦。曰く、恋人。…幼なじみ、先輩後輩、同僚、親友……。
「……」
蓬生は小さく息を吐いた。
蓬生と千秋の関係を名付けるとしたら、人は皆、親友、とか、幼なじみ、と呼ぶだろう。だが、もし面と向かってそう呼ばれたとしたら、蓬生は奇妙な表情を浮かべてしまう気がした。

−…俺のこんな気持ちを、親友、なんて呼ぶんは、あかんやろ。

千秋は蓬生にとって、そこにいるだけで光がさしてくるような人だった。
斜に構え、目をそらし、影へ影へと逃げ込もうとする自分を、無理矢理に日の光の下へ引っ張り出す。行こう、ではなく、来い、と言う。ここへ来い、この光の下へ来い、と。
最初はそれがうっとうしかった。だがやがて、そうして引きずり出されることを心地よく感じるようになった。誰もに好かれ、誰もが憧れる存在の千秋が、ことさらに自分にこだわってくれることがうれしくて、影を見ることをやめ、光を見、千秋を見た。
見つめて、見つめて、……やがて胸にひっそり芽吹いたもの。
千秋と蓬生が男女の関係であったら、恋愛と呼べたはずのそれを、…蓬生は未だ、何と名付けるべきか知らない。

−…俺たちのことを、恋人同士やなんて、…誰も思わん。千秋かって思わんやろ。俺かてよう言わん。

ならばこの思いは何だ。彼を見るだけではやる心。昂ぶる何か。じわじわと背筋から侵されていくような劣情。…彼を思い出しながら自身に触れてしまいそうになったときは、さすがに自分自身に嫌悪感を覚えた。

−…こんなこと、あかん。こんな気持ちは、間違うとんや。

苦しくて。苦しくて苦しくて、それでも。

「来いよ、蓬生」
千秋が蓬生を呼ぶ。淀んだ思いに、また光がさす。
「……しゃあないなあ、千秋は」
口では面倒くさそうに言いながら、自分は立ち上がり、彼の側に立つ。
人からは、親友と呼ばれるだろう仮面をつけて。言葉を交わし、笑い、わき上がってくる思いを必死に仮面の下に押し殺し呑み込む。

会話の最中、千秋は最近時々、奇妙な目で蓬生を見ることがある。
薄く、優しく、なだめるような笑み。……何か、知っているぞ、と言いたげな笑み。
蓬生は、その微笑みに微笑みを返す。……俺は何もわかりません、という笑顔を。
気付かんといて、気付かんといてと、……そう、願いながら。


そして、この思いに付ける名を、未だ彼は知らない。
posted by 麻井由紀 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログイベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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