2011年07月10日

ブログイベントリクエスト小説その2「君よ知るや南の国」

二番目にリクエストいただいた方からのリクエストです。

たいばに、バーナビー・ブルックスjrで、お題は「オペラ」。

な、なんかかっこいい…!ってどきどきしました…。
しかし、顧みて、自分の少ない抽斗にもドキドキしました…(違う意味で。笑)。

元々、リクエストの中に、バニーと家族の場面で思い出すオペラのアリア(『アンドレア・シェニエ』のアリア「亡くなった母を」)がある、とおっしゃっていただいていたのですが、プロットをたてている時点ではその曲が探し出せず、別の曲で話を書かせていただきました。
本日付でいただいたコメントを拝見して、そのアリアが見つかりました……!ありがとうございます!!てか、そうですよね、原語のタイトルで探さないと見つからないですよね!!?
あああああ。お恥ずかしいです…。

教えていただいた曲を堪能しつつ、バニーの回想の灰色の色調に思いを馳せました。
別の曲をイメージして書き上がった話はどちらかというとその対極にあるような色合いで、しかもバニーちゃんという指定なのにオジさんも出しちゃっていますが、……お楽しみいただければもっけの幸い…。イメージと全くかけ離れたものになっていたらゴメンナサイ!!

リクエスト、そしてコメント返しへのコメントも、本当にありがとうございました!またぜひ遊びにいらしてくださいね、お待ちしています!

「バニーちゃん、何か落としたぜ」
言いながら、虎徹が腰をかがめて床に落ちた封筒のようなものを拾い上げ、振り返ったバーナビーに向かって差し出してきた。
「どうも」
短くそれだけつぶやいて、バーナビーは封筒を受け取る。
「何だそれ。…チケット?」
虎徹がそう問うたのは、封筒の形が独特だったからだろう。確かに手紙を入れる封筒に食らべると少し形が細長すぎる。バーナビーは虎徹の詮索に肩をすくめた。以前なら冷たく無視して終えたかもしれない。だが今は、こうして話が広がっていくのが少し心地良い。相手が虎徹ならばなおさら。
「ええ、そうです。…今度オペラを見に行こうかと思って」
「へーえ。いいなあ」
虎徹がつぶやいたので、バーナビーは思わず苦笑を浮かべて首を振った。
「無理しなくていいですよ。…オペラになんか、興味ないでしょう?虎徹さん」
「んー、…まあぶっちゃけ、俺はそんなに詳しくないけどな。…でも一つ、知ってる曲があるんだ」
そう言って、突然虎徹が歌い出したのでバーナビーはぎょっとした。もっとも、歌ったと言っても鼻歌のようなもので、朗々とオペラを歌い上げたわけではない、が。
「君よ知るや南の国 レモンの花咲くあの国を ほの暗き葉陰には黄金色のオレンジがたわわに実り そよ風は青き空より流れいで……」
オペラ『ミニョン』の有名なアリアだ。…ただ、アリアは有名ではあるが、オペラそのものは今やさほど上演数が多いわけではない。虎徹が一つ知っている曲があると言ったとき、てっきりもっとメジャーな、蝶々夫人やトゥーランドット、椿姫、あたりが出てくるだろうと思っていたので意表を突かれた。
虎徹はそんなバーナビーを見てにやにやしていたが、ふと、優しい笑顔になって種明かしをしてくれた。
「俺の嫁さんが好きだった曲だ。よく言ってた。俺がヒーローを引退したら、みんなで、オレンジやレモンの花が咲く南の国へ行こうってな。……行けずじまいだったけどな。…バニーちゃんは?」
「……え?」
突然問われてわけがわからず、ぽかんと聞き返すと、笑いながら虎徹は言葉を足した。
「この街を、出たことがあるか?」
「……」
バーナビーは小さく目を見開き、…それから目を伏せた。
「……いえ」
両親の復讐のために、ただひたすら情報を探す日々。何のめどもなく、一心に思い詰めるばかりの毎日。
南の国など思いもよらない。ただ灰色の空ばかり見ていた気がする。
一言否定したきり無言になってしまったバーナビーを、虎徹は優しい目でじっと見ていたが、ふと、つぶやいた。
「じゃあ、いつか、…行こうぜ一緒に。……南の国へ」
「……っ!」
弾かれたように顔を上げるバーナビーに、虎徹は笑って、歌の続きを少し口ずさんだ。
「君よ知るやそを いざやかなたへ いざともにゆかん、愛しの君よ」
胸が弾んで、けれど信じられないような思いもして。
「…僕と一緒で、いいんですか?」
おずおずと聞くと、虎徹は太陽のように笑った。
「悪いわけがあるか、愛しの君よ?……って、な。……愛してるぜ、相棒。……一緒に行こう。…いつか、…きっと」

posted by 麻井由紀 at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ブログイベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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