2009年09月06日

遙かじゃなくて、すいません。

お盆頃に、多忙と体調不良でお疲れだった友達に、何か気分転換になればと某真剣戦隊さむらいじゃー(こんなんで検索よけになるでしょうか、風水師匠)の話を書きました。

彼女の元で一応の役目を果たしたようなので、ちょっとうちのブログでもネタになってもらうことにしました……。……ええ、今日はちょっとネタ切れで…。ブログが(苦笑)。

某番組にご興味がある方は、よろしければ続きもどうぞ。赤青金ですが、別にカップリングではありません。



「たーけちゃんっ!」
飛びつこうとしたのだが、丈瑠が反応しないことに気がついて、源太は直前で踏みとどまった。
「…何だよ。どした?」
「…いや」
丈瑠は腕組みをしたまましみじみと源太を見る。
「…お前はやっぱり、特別なのかな」
「……はあ?」
何がどう特別なのか、唐突にそんなこと言われても。
俺困っちゃう、と心の中だけでつぶやいて(口に出したら丈瑠が眉を寄せることは明白なので)源太は続きを言えよとあごをしゃくった。促されたと気付いて、丈瑠は素直に口を開く。
「俺は別に、お前と他のみんなで接し方を変えたいつもりはないんだが、…やっぱり流ノ介達の前では、殿らしくと気負ってしまっているのかな」
源太は思い切り吹き出しそうになって唇を突き出したが、慌てて掌で蓋をする。
こらえろ、俺。
なんとか笑いを飲み込んでやり過ごしてから、がしがしと彼は頭をかいた。
「あー、…なんつーかさ、…そりゃたけちゃんがどうこうじゃなくって、相手の受け取り方の問題じゃねーの?」
「…相手?」
「そ。…ほら、千明なんかは結構俺と同じ感じじゃん。ま、ちょーっとばっか、お前を意識しすぎて空回りしてるところはあるけど、殿ーっ!って感じじゃないだろ。茉子ちゃんだってそうだ。お前が殿様だろうが何だろうが、意見すべきところははっきり意見してるよな。しかもかーなり厳しいの、それが」
丈瑠は腕を組んだまま、む、と源太の言葉を考え込む顔になった。
わかってるよ、と源太は心の中だけで笑う。気にしてるのは、その二人のことじゃないんだよな、たぶん。
「流ノ介とことはちゃんが、お前のこと殿、殿、って呼んで、お慕いしてますー、って感じなのは」
「…お慕い…」
ぼそりと丈瑠は復唱した。
「お慕いって感じじゃんか。話の途中で混ぜっ返すなよ、たけちゃん。…とにかく、あの二人がああいう感じなのはあの二人がそういうキャラだからだよ。お前の態度がどうこうじゃねーの、二人のキャラのち、が、い!」
むう、と丈瑠はまた唇を突き出して考え込む顔になった。ふ、とこっそり笑って源太は丈瑠のとなり、一段高いところにある彼の座に、あぐらをかいて座り込む。…まあ確かに、流ノ介はこんなところに座り込んだりしねーよな、と思いながら。
「なんで、急に」
こそっと聞くと、
「ん?」
丈瑠は目だけで源太を見た。
「たけちゃんは、自分は殿様な生まれで立場だってことよーくわかって、ちゃんと納得して殿様やってるんだと思ってたけど」
「…ああ、…そのつもりなんだが」
俺は、欲深なのかな、とぽつりと彼はつぶやいた。
「みんな、大事なんだ」
「…ん?」
「流ノ介も茉子も千明もことはも、もちろん源太、お前も、みんな同じくらい好きなんだ。……だから、態度に差や違いを作りたくない」
源太はとうとうこらえるのをあきらめて吹き出した。
「源太」
「あーもう、真面目だなあたけちゃんは!!」
がし、と幼なじみの頭を抱え込むと、源太はがしがしがしがしその頭をかき回した。
「源太」
迷惑そうに丈瑠が名前を呼ぶが気にしない。
「余計な心配すんな!はげるぞ!」
「…はげ…」
源太は襖の向こうのかすかな気配ににやりと笑う。…たぶん友も気付いているだろうなと思いながら。


夜半。

濡れ縁に出てぼんやりと月を眺めていた丈瑠は、気配に振り返った。
流ノ介が廊下の向こうにいて、小さく首をかしげて笑う。
「…ご一緒してもかまいませんか」
「……無論」
丈瑠は右足で片あぐらをかき、左足を濡れ縁から庭の踏み石に投げ出して座っているのだが、流ノ介はその隣で両膝に手をついて、生真面目に正座する。
かとーん、と、ししおどしが鳴った。まるでそれが合図だったかのように、流ノ介が口を開いた。
「殿、…俺は」
真面目な顔をして。
「源太のように、殿の頭をぐしゃぐしゃにかき回したりは出来ません」
彼が襖の向こうに控えていたことには気付いていた。だからたぶん昼間の話が出るだろうな、とは思っていたが、そこから入られるとは思っていなかった。意表を突かれて丈瑠は一瞬ぷ、と息を吐いてしまった。
振り返ると、流ノ介はあくまで真顔だ。なおその上に。
「ましてことはがそれをするには、背丈があまりにも足りぬと思います」
追い打ちをかけられて、丈瑠は笑いの衝動を必死になって押し殺した。
笑うな。今笑うな、俺。というか、どうしてそっちに話を振るんだ、流ノ介。
「殿が今考えておられる同じ、ということは、…そういうことではないでしょうか」
声の色が少し変わった。ただ真面目なだけではない、少し柔らかさのある声。かすかにからかうような色。
丈瑠は肩越しにそっと斜め後ろを振り返った。流ノ介は変わらぬ姿勢変わらぬ表情でそこにいたが、丈瑠と目が合うとちかりと笑った。
「源太と俺のやり方は違います。…でも、殿を支えていることには変わりはない」
たとえば殿が不在の時に殿の言葉を代弁し、皆をまとめて立ち上がること。
「殿はそれを、俺に任せてくださっていると思っていました。…ちがいますか」
「…違わない」
そうだ。…彼がいてくれると知っているから、俺は飛び出していける。
「俺たちはみんな、俺たち一人一人誰もが、殿にとって特別な存在だと知っています。まあ、千明やことはは意識はしていないでしょうが、戦いの中で打つ手に困ったとき、必ず殿ならば気付いてくれると考えるのです。そして殿はいつもその信頼に応えてくださる」
それは、俺たちが殿にとって特別な存在だからだ。もしそれがどうでもいい相手なら、普段とは違う行動を取っても気づきもしないでしょう。いつも特別な思いで見ている相手だからこそ気付ける。…そうじゃありませんか。
「安心してください。俺たちは、殿が我々を大事にしてくださっていることを、疑ったことは一度もありません」
けれどもしその上で。
「俺に源太と同じ態度を、とご要望なら、善処しますが」
「いや」
間髪入れずに丈瑠は首を横に振った。
「いい。…必要ない」
「…それを聞いて、安心しました。…同じ態度を、と言われたらどうしようかと」
比喩でなく胸をなで下ろす流ノ介を見て、先刻の笑いの衝動を思い出す。思い出したら今度は我慢できなくなって、丈瑠はくつくつと笑い出した。
首をほんの少しかしげた流ノ介も、丈瑠の笑いが止まらないのを見てつられたのか、静かに笑い始める。
月の光が冴え冴えと、そんな二人を照らしていた。
posted by 麻井由紀 at 23:05| Comment(0) | 他の小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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